オンライン研修
Security Risk Management SRM(安全管理)
このオンライン研修では、学習者は、仮想国とそこで活動する仮想NGOの職員と想定して、セキュリティ・リスク・マネジメント(Security Risk Management SRM:安全管理) について学びます。
この研修のテーマは、”Security is an enabler” です。つまり、
- 安全管理は、開発・人道の支援ニーズに応え、活動を可能にするために行います。
- 「~してはいけない」と禁止するものではなく、自分達の身を守り、活動を可能にするための手段です。
- リスクはゼロにはなりません。評価して、コントロール(管理)するものです。
Security Risk Management (安全リスク管理)のプロセス
これから見ていくプロセスはこのようになっています
Security Risk Management SRM(安全管理)のプロセス
シミュレーション
この研修では、とある仮想国「Suremia(スレミア)」を舞台に、そこで活動するNGO「Quick Medical Delivery, QMD」の職員として、支援活動をシミュレーションしながらSecurity Risk Management=SRM(安全リスク管理)を学びます。
スレミア概況
【スレミア地図】
【スレミアの州/州都を示した地図】
スレミアは第6大陸の熱帯地域に位置する小国で、西部は海に面しており、中央部は山岳地帯で熱帯雨林と乾燥した高原部、さらに東部には湿地帯からなる。主要な都市は平野部の首都ヴァレス(Vares)で、人口の約30%が住む。道路舗装率は25%に留まり、特に山岳部では幹線道路以外未舗装で、治安も悪く、国内移動には困難を伴う。伝統的社会であり、イスラム法と慣習、また服装に関する規範が広く尊重されている。ヴァレスとその周辺は比較的リベラルであるが、東部に行けば行くほど保守的で、伝統的慣習が色濃く残る。
1830年に英領植民地より独立したが、民政と軍政を繰り返し、軍事評議会の実質支配下にある。ワッサー(Wasser)川を挟んだ東側では、言語・慣習が異なる少数派が多く居住しており、隣国マルドンによる併合を求めるマルドニアン自由戦士軍(Mardonian Free Fighters, MFF)と、ワッサ州の独立した自治を求める自由ワッサ人民戦線(Free Wassa People’s Front, FWPF)が勢力を拡大しており、これら武装勢力支配地域では中央政府の統治は十分に及んでいない。
東部地帯では、隣国マルドンからの難民(推定13万人)の支援をUNHCRが実施しており、他にもWFPなどの国際機関及び国際NGOが難民と国内避難民の支援を行っている。中央政府に反発する武装勢力支配地域では、こうした国際機関は中央政府寄りとみられる傾向が強く、活動実施には安全管理上の困難が大きい。
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シミュレーション
スレミア詳細(国連のセキュリティ・ブリーフィング資料より)
▶ 地理・経済
第6大陸の熱帯に位置する小国で、西部は海に面しているが、中央部及び東部は山岳地帯で熱帯雨林と乾燥した高原部、さらに湿地帯からなる。北部山岳地帯では金などの鉱物資源を産出する。面積は15万平方キロメール、人口は約600万人と推定される。主要な都市は平野部の首都ヴァレス(Vares)及び中央高地のテュロス(Turos)で、人口の約30%は首都に住む。道路舗装率は25%に留まり、特に山岳部では幹線道路以外未舗装で、治安も悪く、国内移動には困難を伴う。
近年、経済成長率は3%で、平野部では伝統的な農耕と貿易が、山岳部では遊牧や手工芸品生産が主な産業である。しかし、過去2年間の干ばつによる食糧不足などの影響で、山岳部から多くの人口が都市部に流入し、インフレと治安悪化を招いている。過去5年間、政府は外国投資の誘致を進めたが、行政の非効率と汚職、山岳部での武装組織との戦闘激化や都市部での社会不安により、外国企業の進出は頭打ちになっている。
▶ 政治状況
1830年に英領植民地より独立したが、民政と軍政を繰り返し、軍事評議会の実質支配下にある。ワッサー川を隔てた東部地域では言語・文化が異なる少数派が多く居住しており、隣国マルドンによる併合を求めるマルドニアン自由戦士軍(Mardonian Free Fighters, MFF)と、ワッサ州の独立した自治を求める自由ワッサ人民戦線(Free Wassa People’s Front, FWPF)が勢力を拡大しており、これら武装勢力支配地域では中央政府の統治は十分に及んでいない。12名の軍人からなる軍事評議会は、形式上10名の文民からなる行政委員会の助言の下に運営されているが、過去の数度にわたる行政委員の選挙は不正が指摘され、抗議と社会的騒乱が繰り返されてきた。
▶ 人道支援
東部では、国境沿いの都市ザイナス(Xynas)を拠点に、隣国マルドンらの難民(推定13万人)の支援をUNHCRが実施しており、他にもWFPなどの国際機関及び国際NGOも難民及び国内避難民の支援を行っている。また、平野部で教育、村落開発などの開発支援を行って来た国際NGOも存在する。しかし、武装勢力支配地域では、国際人道支援機関は中央政府寄りとみられがちで、活動実施には安全管理上の困難が大きい。また、近年の山岳部から都市部への貧困層の流入に伴い、首都ヴァレスでも国内避難民の支援を開始したNGOがある。シェルター、水・衛生などの基本的ニーズに加えて、教育やジェンダーなど、人道・人権上の課題が多いにもかかわらず、治安状況の悪化とドナーの関心低下により、需給ギャップは埋められていない。
▶ 安全概況
ほとんどの国際NGOが、スレミアでの活動に安全管理上の高い危険が伴うと認識しており、多くの団体が首都ヴァレス以外への家族の帯同は認めていない。概況としては、法の支配の脆弱性による脅威、特に盗難、カージャッキング、車両爆破などが想定され、極端なケースとして東部で対立する武装勢力間の戦闘による脅威もある。
▶ テロリズム
スレミアでは、テロリズムの脅威が増大している点に十分留意する必要がある。対象の特定、不特定を問わず、テロリズムの脅威は毎週報告されており、各国の大使館は職員の移動をエッセンシャルスタッフに限定するなどの措置を取っている。スレミアに滞在し、特にヴァレスの外へ移動する場合には、自分の状況を常に把握しておく必要がある。細心の注意を払って行動し、同じルートや行動は避けるべきである。車両のドアは常にロックされ、ウィンドウも閉められていることを確認する必要がある。また、可能であれば無線や電話で移動を定期的に報告すべきである。
外国人がよく訪れるホテル、レストラン、商店、市場などの公共の場所を頻繁に訪問することは控えるべきで、特に混雑する時間帯は避けるべきである。英国大使館は最近、警備が手薄ないくつかのレストランの職員利用を禁止としている。移動に際しては、現地をよく知る者から事前に助言を得ることが強く推奨される。
以上の勧告に加え、ヴァレス外を移動する場合には、信頼できるガイドと共に行動すべきであり、訪問先は十分に警護されている場所に限定すべきである。また、武装警護も検討すべきである。以上の警告をすべて守ったとしても、自分の安全は保障されないことは、理解しておく必要がある。
現在までのところ、同国内の勢力がアルカイーダやISISといったテロ・ネットワークとの繋がりがあるかどうかは確認されていない。しかし、同国内で、特定のテロ組織による英国や西欧諸国の組織、団体、個人及びこれらの人々が集まる場所への脅威に関する情報が一貫して報告されている。今後予想される攻撃としては、車両爆弾、遠隔操作または自爆による爆破攻撃(対人及び対車両)及び誘拐や暴行である。グローバルな無差別テロ攻撃のリスクに留意する必要があり、外国人が集まる場所では、国籍を問わず市民が犠牲となることもあり得る。
▶ 選挙
首相の公選選挙が来年3月に予定されている。中央議会と地方議会選挙の日程も、来年1月中旬には発表される予定である。これらの時期には、社会的な緊張が高まることが予想される。
▶ 陸路・空路
ほどんどの道路は未舗装で、一般に車両の運転技能やマナー悪く、ほとんどの現地のドライバーが保険に未加入である。交通事故が、争いや脅迫に繋がる恐れもある。
英国の民間航空管理局は、英国への直行便がないため、スレミアの民間航空機の安全基準評価を行っていない。しかし、国際民間航空機構の技術協力局による2018年の評価では、スレミアの民間航空機について安全上の懸念が多数報告されている。英国政府は職員に対し、スレミア国内の民間機を使用しないよう推奨している。2019年2月に、テュロスからヴァレスに向かうマード・エア(Mard Air)のボーイング727-200機が、テュロスから17Kmの地点で墜落し、乗客96人と乗員8人が死亡した。英国政府職員は、マード・エアを使用しないよう推奨されている。
▶ 現地法と慣習
スレミアは伝統的社会であり、イスラム法と慣習、服装に関する規範が広く尊重されている。ヴァレスとその周辺は比較的リベラルであるが、地方では東部に行けば行くほど保守的で伝統的な習慣を重んじる。政府機関や軍事施設の写真撮影は禁止されている。また現地の人の写真を許可なく撮影すべきではない。
▶ 保健医療
WHOは、2023年4月23日にワッサヴィル(Wassaville)でのコレラのアウトブレイクを報告している。4月23日から5月19日の期間に、スレミア保健省はコレラによる急性の下痢症について、ワッサヴィルで2,962人、ザイナスで725人、ミンク(Mink)で1人の死亡を含む29人のケースを報告している。
下痢性疾患と消化器系の感染症は、住民の体調悪化の主な原因であり、特に暑い時期には急速に悪化する傾向がある。また埃の多い気候は、目、喉、肌に痒みなどの症状を引き起こす原因となる。肺結核はスレミアでは広くみられる病気である。マラリアも、高地を除く地域や冬季の期間を除いては、潜在的に感染の可能性がある。
スレミアへの渡航に際しては、十分に健康に配慮し、事前に健康診断や医師の診察を受けるべきである。同国で受けられるのは、非常に限定的な保健医療サービスのみである。深刻な事故や病気の場合には、空路による緊急搬送が必要となるため、渡航前には総合的な旅行と医療をカバーする保険加入が推奨される。また保険の適用除外条項を確認し、自分が従事する活動が保険の対象となるか、確認する必要がある。また滞在期間中に必要とする医薬品についても、現地では恐らく入手困難であるため、医療機関で薬の処方を受けて持参すべきである。
仮想NGO “Quick Medical Delivery” 概要
日本に本部を置く国際NGOで、スレミアでもUNHCRとのパートナーシップにより活動している。元々医療支援を提供する団体として活動を開始したが、過去数年間で総合的なコミュニティヘルスと開発支援を行うようになってきている。スレミアでは、難民キャンプで保健医療と衛生プログラムを実施している他、スレミア西部地域のコミュニティに対しても予防接種と水衛生の事業を展開している。
QMDスレミア事務所は、首都ヴァレスの国際機関やNGOなどが多く事務所を置くエリアにあり、さらにザイナス(Xynas)とウマラス(Umaras)にも小規模のフィールドオフィスを置き、事業実施を管轄している。スレミア全体では、10名の日本人スタッフとその他の国籍の4名の国際スタッフ、さらに30名のスレミア人ローカルスタッフがいる。
QMDのヴァレス事務所からは、定期的に車両で現地スタッフが出張して、ザイナス事務所にモニタリングやアセスメントのため訪問している。ただし、近年渋滞や治安悪化等によって移動にはより時間を要するようになっており、日没前にザイナス事務所に到着できないことも多くなっている。また東部地域は反政府勢力の支配地域であり、近年治安悪化の傾向がある。
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仮想NGO “Quick Medical Delivery” 概要
Quick Medical Delivery (QMD)の団体概要
▶ Quick Medical Delivery (QMD)の団体概要
QMDは日本に本部を置く国際NGOで、スレミアでもUNHCRとのパートナーシップにより活動している。元々医療を提供する団体として活動を開始したが、過去数年間で総合的なコミュニティヘルスと開発支援を行うようになってきている。現在スレミアでは、難民キャンプで保健医療と衛生プログラムを実施している他、スレミアの首都ヴァレスでも、貧困層の多いコミュニティで予防接種と水衛生の事業を展開している。
QMDのスレミア事務所は、首都ヴァレスの国際機関やNGOなどの多くが事務所を置くエリアにあるが、ザイナスとウマラス(Umaras)にも小規模のフィールドオフィスを置き、事業実施を管轄している。10名の日本人とその他の国籍の4名の国際スタッフ、30名のスレミア人ローカルスタッフがいる。
QMDスレミアのミッション・ステートメント
Quick Medical Delivery(QMD)は国際的非営利組織です。私たちの団体は医師を含む医療従事者を中心に、目的達成に貢献する様々な専門家で構成されています。
QMDメンバーは、以下の原則を尊重することに同意します。
1. QMDは、自然災害や人為的災害および武力紛争の犠牲者を対象に、人種、宗教、信条、政治的信念に関わりなく、困窮している人々に支援を提供します。
2. QMDは、普遍的な人道原則と、人道支援を受ける権利に基づいて、中立性と普遍性を保ち、その活動の実施に際していかなる外部の制約にも拘束されないことを求めます。
3. QMDは、すべての政治的、経済的、あるいは伝統・宗教的権威の権力からも、完全な独立性を維持するよう努めます。
4. QMDのボランティア、スタッフ、メンバーは活動に従事する際に直面するリスクと危険を理解し、組織が提供可能な範囲を超えて、いかなる補償も求めないことに同意します。
▶ 活動
QMDスレミアは、上記ミッションに基づき、スレミアにおいて困窮しているマルドン及びトゥレラからの難民を含むすべての人々を、過去10年以上にわたって支援してきた。QMDが行う医療及び他の分野の活動は以下の通りである。
1. 水・衛生プログラム
2. 基礎医療サービス
3. 食糧・栄養プログラム
4. 初等教育プログラム
▶ 安全管理
QMDは、その主体的な判断に基づき、国連スレミア・ミッションの定める一般的な手順に従って活動している。QMDは毎週のセキュリティ会合に出席する他、UNHCRとUNICEFの活動パートナーとなっている。また日本政府からも一部活動について補助金を得ている。現在QMDはスレミアに3つの事務所を置いており、それぞれヴァレスのスレミア代表事務所(QMV)、ザイナス地域事務所(QMX)及びウマラス地域事務所(QMU)である。スレミアの安全概況に鑑みて、来年1月までに、包括的な安全管理計画を作成することが推奨されている。
2つの地域事務所も、セキュリティの専門家によって来年前半にはアセスメントを受け、その結果に従って、団体の財政的な制約が許す限り、安全管理体制を見直すことが強く推奨されている。去年、脆弱性に関する評価が行われたものの途中で中断されており、その評価を継続、完了した上で、財政的に可能かつ効果的な方法を考案して、対策を実施することが求められている。各事務所は現在スタッフが常駐し、週5日勤務している。
▶ 支援ニーズ
QMDは現在、以下の人々を対象に活動している。
• 都市部の貧困層(ヴァレス)
• 中央州及び南部州の村落
• 難民と国内避難民(マール(Mar)、ワッサ及び南部山岳地帯の諸州)
▶ 政策的優先課題
QMDの活動においては、女性、ジェンダーの平等、子どもと青少年、難民の中で障がい者など特に支援を必要とする人々、環境に関する配慮などの優先課題への取り組みが、事業の立案、実施、さらにモニタリングや評価においても、明確に示されていなければならない。
調整を行うパートナー組織の能力とプレゼンス
QMDはスレミア保健省と、スレミア難民支援局(Suremian Agency for Refugee Relief, SARR)と、スレミア全土で密に連携して活動している。SARRはキャンプの運営と難民への食糧配布を実施している(ただし国内避難民(IDP)は対象としていない)。SARRはスレミア国軍及びスレミア国家警察と関係を有しており(SARRの職員の多くは国軍又は警察の出身である)、ロジスティックスにおいてもQMDの有益なパートナーである。しかし、難民の保護と支援に関しては、解決すべき課題も残る。
さて、スレミアと、そこで活動するQMDの概要を前提として、これから安全リスク管理(SRM)について学んでいきましょう!この研修は4部で構成されています。
①脅威と脆弱性
②リスクとは?対策は?
③リスク管理の実践
④プログラムの緊要性