Security Risk Management SRM(安全管理)のプロセス
① 脅威と脆弱性
プログラム評価
脅威評価
脆弱性評価
② リスクとは?対策は?
リスク
インパクト
起こる可能性
③ リスク管理の実践
リスクを管理
④ プログラムの緊要性
プログラムの緊要性
リスクの程度
リスクは許容可能か?
予防及び軽減の対策を実施する
リスク管理のために一般的な予防アプローチ及び軽減アプローチをいくつか記載します。
- 計画
- 事前の調整
- 通信装備及び手順
- 車両設備及び手順
- スタッフの知識及びスキルアップ
計画
基本的な考え方は、事前に計画を策定することで、問題が生じる可能性を予見し、対応時間を短縮できるということです。パートナー団体と共同で策定する場合、一致した対応を促進することができます。
事務所の安全管理計画には、安全に責任を負う主要な人物の特定、状況及び脅威の分析、事態が生じた場合に予測される基本的な措置等の基本情報が含まれます。通常、スタッフの最新の名簿を別紙として添付します。各事務所は、いかに小規模であっても、安全管理計画を必ず持つべきです。ただし、どの程度細部まで詰めるかは、事務所の必要性に応じて異なることになります。
想定される危機的事態への対応計画では、リスク評価の過程で特に重要と特定したシナリオについて、事務所の対応方法を明らかにします。これは、付録として安全管理計画全体に含めることができます。
安全管理計画について話し合う場合、忘れてはならないのが「計画書には意味がない、計画することがすべてである」という格言です。これが意味するのは、計画策定プロセス自体から生まれる価値(パートナーとの会合、問題の特定、選択肢のブレインストーミング)は、その結果としての計画文書より重要であることが多いということです。
参考資料: UNSMS Security Policy Manual – Security Planning

事前の調整
調整は、2つの重要な安全上の機能を果たします。
- 安全に影響を及ぼす重要な情報を、手遅れになる前に知ることができる。
- 事態が生じた場合に、迅速で一致した対応を促進することができる。
調整手段は、外部及び内部の双方となる可能性があります。
- 外部の調整では、重要なパートナーとして以下のような関係者が考えられます。すなわち、受入国政府の担当者、他の人道/開発支援機関、地域社会のリーダー及び団体の受益者です。連携を確保し、重要な安全上の情報をこれらの情報源から適時、確実に得られるようにする必要があります。
- 内部の調整には、緊急連絡担当者制度、または連絡網の策定が含まれ、これによって、危機的事態の際、すべてのスタッフと確実に連絡を取ることができ、とるべき行動がわかるようになります。システムを導入した際には、リハーサルを忘れてはなりません。
通信装備及び手順
リスクを伴う環境下で活動する人道・開発支援機関にとって、この対策の重要性は非常に大きいため、特に注意を向ける必要があります。以下に掲げる重要な課題について検討を行うべきでしょう。
- 危機的事態の際に、すべてのスタッフと通信する確実な手段を有しているか。またすべてのスタッフが自分に連絡を取ることができるか。
- 重要なパートナー及び本部と通信する方法を有しているか。
- リスクにさらされている地域で活動するスタッフは、相互に通信する手段を有しているか。
- 特定のリスクにさらされることが多い地域の路上を移動する際、スタッフと確実に通信することができるか。
- 上記のすべてに対して通信のバックアップ手段があるか。これは、特にリスクの高い地域では、最低限の基準といえます。
- 装備が十分に維持管理されているか。スタッフが装備の操作方法を知っているか。
- 適切な通信プロトコル/手順が導入されているか。スタッフが通信プロトコル/手順を知っており、遵守しているか。
一般的な通信手段として、以下に掲げるすべての事項が検討対象となります。詳細な助言については、遠距離通信や安全担当の専門家に相談すべきでしょう。
- 携帯電話(大規模な危機では、ネットワークに負荷がかかり通信できなくなる可能性が高いことを忘れてはならない)
- 衛星電話(地域が衛星通信の適切な受信区域になっているか、活動国政府は許可しているか)
- 固定電話(地域のネットワークは安定しているか)
- VHF及びHF無線機(帯域/地形による制限に精通しているか、追加の基地局または中継局が必要か、傍受される可能性も把握しているか)
車両設備及び手順
通信装備と同様に車両設備についても、移動中はスタッフが脆弱になるため、特別の注意を払う必要があります。主要な課題として、以下の事項があげられるでしょう。
- 地域の脅威に対して車両を適切に選択の上、必要な装備を施しているか
- 車両は地形及び自然災害に対して適切であるか
- もし必要な場合、車両の追跡システム等、適切な手順が導入されているか
- スタッフは事態が生じた場合の緊急措置を知っているか
- 運転手は適切な訓練を受けているか

スタッフの知識及びスキルアップ
安全上のリスク及び手順に関する知識が豊富で用心深いスタッフは、安全に関わる事態を回避するか、事態が生じた場合にも効果的に対処できる可能性が高いといえます。この点の理解は、総合的な安全管理戦略において重要となります。必要な知識及びスキルとして、以下の事項があげられます。
- 活動地の概況、その脅威及びリスクの概要について説明を受け、理解していること
- 安全管理計画についての知識
- 想定される危機的事態に対する対応及び手順についての知識(安全に関する啓発訓練の必要性)
- 危機的事態が発生した場合に従うべき具体的な手順(危機的事態への対応計画で定められた手順)についての知識
- 安全リスク管理スキル(脅威及びリスクの評価等)
- 異文化理解
上記に挙げたリスク管理で、すべての危機的事態に対応できるというわけではありません。リスクを低減し、事業を成功に導く方法は、それに従事する各人が創造性と想像力をもって、計画を立案できるかどうかにかかっています。管理責任者が常に心掛けるべき重要な点は、広範な選択肢を持ち、そこから選択できるよう常日頃準備しておくということです。バランスの取れた総合的な安全管理戦略は、ほとんどの場合、多様性に富んでいます。

ここまでで、リスクを管理する(下げる)ためには、予防策として起こる可能性の低減、また軽減策としてインパクトの低減があることを学びました。では、スレミアで活動するQMDの事例について、どのような対策を取れば、リスクを下げられるかを考えてみましょう。
例1:【暴行】
1月の議会選挙までに(いつ)、QMDのヴァレス事務所前で(どこで)、選挙活動に関連して暴徒化したデモ隊が(誰が)、QMD事務所に押し入り、女性国際スタッフ1名が(誰を)、暴行を受けて(どのように)重傷を負う。(何:暴力)
★考えてみよう★
どのような対策を取れば、リスクを下げられるでしょうか?
- 事務所の場所を検討し、引っ越す/二階以上に事務所を構える
- 事務所に警備員を配置する、防犯カメラを設置する
- 事務所の内部が見えないように遮蔽物を置く
- リモート勤務体制を整え、デモが予測できる時期には、スタッフの事務所勤務を控える
- 負傷した際にはすぐに応急手当が行える体制をとる(応急処置研修、医療機関への連絡・搬送など)
- 警察への連絡など、緊急時のホットラインを確保しておく

次に、これらの対策は、予防と軽減、どちらの対策でしょうか?
- 事務所の場所を検討し、引っ越す/二階以上に事務所を構える(予防)
- 事務所に警備員を配置する、防犯カメラを設置する(予防&軽減)
- 事務所の内部が見えないように遮蔽物を置く(予防)
- リモート勤務体制を整え、デモが予測できる時期には、スタッフの事務所勤務を控える(予防)
- 負傷した際にはすぐに応急手当が行える体制をとる(応急処置研修、医療機関への連絡・搬送など)(軽減)
- 警察への連絡など、緊急時のホットラインを確保しておく(軽減)

例2:【強盗】
半年以内に(いつ)、団体として入域を禁止している地域の道路上で(どこで)、強盗が(誰が)、QMDザイナス事務所のローカルスタッフが乗っているた車両を銃撃し(どのように)スタッフ複数名が(誰を)負傷し、一部が致命傷を負う (何:強盗)
★考えてみよう★
どのような対策を取れば、リスクを下げられるでしょうか?
- 安全対策が守られるよう、定期的なスタッフ研修を行う
- 普段から規定を守ることを評価し、反対に、規定を破ることにペナルティを科す
- 適切な休暇をとる、スタッフを増やすなどして過労状況を改善する
- 緊急時の対応などドライバーのトレーニングでスキルアップを図る
- 応急処置キットを常備し、また定期的な研修を行い、万が一の事態に備えておく
- スタッフがリフレッシュできる代替策を提示する
- スタッフに、重大な事故・事件が起こったときの対応、CIM(危機的事態の管理)を周知しておく
次に、これらの対策は、予防と軽減、どちらの対策でしょうか?
- 安全対策が守られるよう、定期的なスタッフ研修を行う(予防・軽減)
- 普段から規定を守ることを評価し、反対に、規定を破ることにペナルティを科す(予防)
- 適切な休暇をとる、スタッフを増やすなどして過労状況を改善する(予防)
- 緊急時の対応などドライバーのトレーニングでスキルアップを図る(予防・軽減)
- 応急処置キットを常備し、また定期的な研修を行い、万が一の事態に備えておく(軽減)
- スタッフがリフレッシュできる代替策を提示する(予防)
- スタッフに、重大な事故・事件が起こったときの対応、CIM(危機的事態の管理)を周知しておく(軽減)


これらの予防アプローチと軽減アプローチを取ってリスク管理を行った結果、リスクはどれくらい下げられるでしょうか。リスクマトリックスで、見てみましょう。

対策を講じた結果、例1、例2ともリスクを下げることができました。
参考資料 : UNSMS Security Policy Manual – Policy on Security Risk Management

安全管理のトライアングル
安全管理の手法として、ACAT以外にも、「安全管理のトライアングル」という、直接的に攻撃の意図をもった相手に対する3つのアプローチを紹介します。
- 防護/ハード強化(Protection):
物的あるいは他の手段で、危害に対して自分自身を防護する、あるいはハード面を強化する - 抑止(Deterrence):
法の支配、外交、警備、装備、武装警護等により、対抗して脅威を与えることで攻撃する意図を低下させる - イメージと受容(Image and Acceptance):
支援活動の必要性や個人及び団体の性格を理解してもらい、攻撃することに意味やメリットはないと納得させる

1. 防護/ハード強化(Protection)

これは、安全対策を考える際、通常最初に思い浮かぶ対策でしょう。防護対策は、危害を加えようとする者の到達をより困難にし(できれば攻撃を試みることをも防止する)、または攻撃が生じた場合に、その影響を軽減することを意図しています。一般的な(しかし大抵の場合に重要な)防護対策には以下に掲げる事項が含まれます。
- 強固な囲い(壁または頑強なフェンス)
- 頑丈な門及び錠前
- 頑丈な錠前のドアを備えた強力な建材
- 外部に面した窓の飛散防止フィルム
- 外部に面した窓の柵
- 監視テレビ(CCTV)
- 緊急時の備品を備えた貯蔵庫または隠し部屋
また、通常は防護対策とはあまり認識されていない、以下のような対策も含まれます。
- 救急救命用装備(事態が生じた場合に、インパクトを低減するため)
- 通信設備(迅速に対応/反応することができるため)
- 訓練(知識が豊富で警戒心の強いスタッフがいることは、標的として攻撃を困難にさせるため)
しかし、防護対策には、デメリットもあります。
- 設備中心であり、費用がかかる場合が多い。
- イメージ戦略及び受容戦略と相反して作用する恐れがある。
それでも、ある程度の防護対策は、ほとんどの場合、総合的な安全管理対策に含まれます。
2. 抑止(Deterrence)

抑止は、危害を加えようとする者が到達するのをより困難にする(できれば到達する可能性を低くする)という意味では、「防護対策」の一形態です。具体的な相違点は、「抑止」という語が示すとおり、攻撃者が到達するのを「困難」にするだけでなく、危害を加えようとしている者に、こちらから働きかけて何らかの害が生じるようにしようとする点です。人道・開発支援機関はどのような抑止手段を持つことができるでしょうか。
警護 適切かつ必要な場合、事務所や活動地域の安全を以下に掲げる何らかの方法で強化することが考えられます。
- 現地採用の、または信頼できる警備会社の非武装警備員
- 信頼できる警備会社の武装警備員
- 受入国政府が特に提供する警備員
- 現地警察
- 地域を移動する警察または軍による立寄りによる警護
- 受入国政府の軍による警護
- 国際的軍事組織(国連平和維持軍等)
- 状況に応じ、上記以外の軍事組織(活動地を支配する特定の党派の軍、または活動地で作戦行動している国軍)
場合によっては、警護を使用すること自体がリスクを伴うことがあるため、注意深くバランスを取らなければなりません。 警護を使用する際は、次のような重要な事項を検討する必要があることに留意してください。
- 警護を担当する者の訓練レベル及び認識レベル
- 団体のミッションやマンデートに及ぼす影響
- 団体の活動の公平性・中立性に対して及ぼす影響(現地政府や非国家組織、支援対象者、国内外のメディア、団体の支援者等の各関係者が、武装警護をどのように認識するか)
プログラムの停止 場合によって、プログラムを停止する(または完全に撤退する)という威嚇は、ある種の脅しとして抑止力の一つになる可能性があり、現地の当局と支援について交渉を行う際の有力な交換条件にもなり得ます。

3. イメージと受容(Image and Acceptance)

イメージ戦略及び受容アプローチは、団体に危害を加えたいという潜在的攻撃者の欲求を低減させることで、攻撃が起こる可能性を低減させようとするものです。一般的アプローチとして、以下の事項があげられるでしょう。
- 団体の事業を説明する明確で積極的な啓発活動
- 現地の人々との定期的かつ建設的な交流
- 人々にとって利益があり、さらにその利益を公平かつ正当な方法で分配する事業計画
- 現地の文化規範を尊重するスタッフの行動
場合によっては、イメージ戦略や受容アプローチが防護アプローチと対立するように見える可能性もあることに留意してください。この場合、管理責任者は、具体的な状況や業務全体を考慮の上、それぞれの対策の長所と短所のバランスを取らなければならなりません。
また、「受容」という用語が二重の意味で使われることに留意してください。人道支援機関にとって「受容」は、通常地元住民が団体のスタッフ及び事業を受入れ、理解することを意味します。しかしリスク管理業界では、「受容」は、人の「リスク許容度」として用いられるのが通常です。すなわち、人が受け入れる用意のあるリスクの程度を示します。このような理由から、現在では、人道・開発ワーカーに対する悪意を低減することを目指す一般的な戦略に「敵意の回避」という用語を用いる著作もあります。
これで、【③ リスク管理の実践】のセッションは終了です。
Security Risk Management SRM(安全管理)のプロセス
① 脅威と脆弱性
プログラム評価
脅威評価
脆弱性評価
② リスクとは?対策は?
リスク
インパクト
起こる可能性
③ リスク管理の実践
リスクを管理
④ プログラムの緊要性
プログラムの緊要性
リスクの程度
リスクは許容可能か?